高度進行がんを無理に切除しない

私はガンで死にたい 小野寺時夫

高度進行がんとは、がんが周囲の臓器組織に浸潤していたり、他の臓器に転移したりしている状態です。
がんは大別して2つのタイプがあります。
1つは、がんが周囲の組織に浸潤するとともに、離れた部位に転移を起こすタイプです。
もう1つは、治療しないで放っておいても、次第に大きくはなるが浸潤や転移を起こさず、命取りになりにくいタイプのものです。

どちらのタイプなのか、診断時に分かるといいのですが、現実には経過を観察してみなければわからないことが多いのです。
手術で治るガンは、浸潤や転移がないか、あっても原発巣の近くに限られている場合、あるいは放っておいても命取りになりにくいがんの場合なのです。

浸潤や多発の転移がある場合は、無理に原発巣のがんを切除してもほとんど延命はできません。
直径1ミリのがんにがん細胞が百万個もあるのですから、目に見える浸潤を全部切除し、その上周囲のリンパ節や脂肪組織などを徹底的に切除しても、散らばっているガン細胞を根こそぎ取り去ることはできないのです。

浸潤性のがんでは、莫大の数のがん細胞が絶えず血液中に流れ出て、全身を巡っています。
手術後に転移が発生したということは、手術時にすでに飛び火していたものが、増殖してやがて検査でわかるまでの大きさに成長したということなのです。
高度進行がんを無理に切除すると、残ったガン細胞の遺伝子が変わるのか、手術ストレスで患者さんの免疫力が低下するのか、がん細胞が突然勢いづいたかごとく、術後あっという間に再発したことがあります。