過ぎたるは及ばざるがごとし

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

鈴木さん(68歳 男性 脳出血 余命1か月)は脳出血の後遺症として四肢麻痺があり、鼻から管を入れて栄養をとり、気管切開をして人工鼻をつけている昏睡の患者さんでした。
気管切開をすると、2時間おきの吸引、1日に12回も痰の吸引措置をしなくてはいけません。
普通の人なら、家で看護なんてできないだろうと諦めてしまうのではないでしょうか。
でも鈴木さんの奥さんは、在宅ホスピス緩和ケアによる奇跡を見ていた人でした。
ある日、奥さんが小笠原内科の相談外来に来てこう尋ねました。
「私の夫がいつ死ぬかわからないと言われたんです。家に連れて帰りたいと病院の先生にお願いしたんですが、ダメだと言われました。どうしたらいいですか?」
「退院させても大丈夫ですよ」
「では、小笠原先生の名前を出して、もう一度頼んでみます」

すると鈴木さんは退院することができたので、小笠原内科の在宅ホスピス緩和ケアを開始しました。
しかし奥さんにとって負担なのは、2時間おきに行う痰の吸引です。
そこで2時間ごとの吸引を、5時間に1回で済むような計画を立てました。
痰が出るのは水分の多量接種にも原因があるので、水分を減らすことが近道なのです。

須々木さんは入院中、1500mlの高カロリーの経鼻経管栄養をしていたので、低カロリーにするとともに、水分量を750mlに減らしました。
それだけで、痰の吸引は1日12回から4~5回に減り、鈴木さんは苦しそうな呼吸をするがことがなくなりました。

”過ぎたるは及ばざるがごとし”なのです。