訪問介護や訪問入浴に支えられて

なんとめでたいご臨終 小笠原文雄

痰の吸引処置が1日12回から4回になり、奥さんの負担はとても減りました。
それでも朝昼晩と就寝前の4回の吸引措置があると、1日外出することもできません。
そこで鈴木さんには、痰の吸引ができる介護職に週10回、訪問入浴サービスを週2回、訪問看護師には週2回来てもらい、必要があればその都度吸引をしてもらうことにしました。

ちなみに、これだけの回数で支えると、医療保険と介護保険の自己負担額はいくらになると思いますか。
鈴木さんの場合、訪問診療、訪問介護、訪問薬剤、訪問入浴、介護ベッドのレンタル代を合わせても1か月約34,000円でした。

さらに、往診は1年間でたった4回でした。
家に帰って苦しみが取れて笑顔になると、往診回数は驚くほど減るのですね。
そして「いつ死ぬかわからない」と言われた鈴木さんは1年もの間、自宅で穏やかに過ごし、奥さんがそばにいる時に旅立たれました。

旅立ちの後、奥さんが私にこんなことを言いました。
「夫は本当にいい最期でした。小笠原先生の黄色い本を読んでいたおかげで、私も安心して見送ることができました。夫がお世話になった人たちにも、いい生き方、死に方をしてほしいと思うので、先生の本を香典返しにさせてもらいます。皆さんがこの本を読まれたときに、夫のことを思い出してもらえたら、私もうれしいです」