退院直後笑顔でピース

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

2014年のある日、岐阜県内で開業している今井医師から電話がありました。
「鼻マスク型人工呼吸器をつけて、さらにカテコラミンを持続点滴している重症心不全患者さんが”家に帰りたい”と言っていると病院から連絡を受けました。小笠原先生、どう思われますか? 何とか願いを叶えてあげたいとは思うんですけど、私はカテーテル点滴の患者さんは経験がないんですよん」
そこで私はこう答えました。
「人工呼吸器も同時というケースは私も初めてですけど、カテコラミンの持続点滴は25年以上前からしているので大丈夫ですよ。家に帰らせてあげましょうよ」

その後、森さん(75歳 男性 重症心不全)は退院することが決まり、今井医師が主治医、私がサポート医として医療チームに加わることになりました。
しかし、退院時の森さんは、・重症心不全の治療に必要なカテコラミンの持続点滴をつけている。
・肺気腫による呼吸不全を緩和する鼻マスク型人工呼吸器をつけている。
・心機能を表すEFの値が20%(正常55%~85%)と極端に低下していると、非常に難易度の高い患者さんでした。
ところが退院直後、何と森さんは笑顔でピースをしたのです。
思わず私は、ご家族と医療チームのスタッフと一緒に記念撮影をしました。