臨死体験

私はガンで死にたい 小野寺時夫

臨死体験とは、脳波の変化などいから休止している大脳が再び活動する時に起こる「夢」のようなものだと思います。

私と一緒に働いていた看護師(31歳)が、C 型肝炎の針刺し事故が原因と思われる劇症肝炎を発症しました。
私ども医師団が血液の血漿成分を入れ替えるなど懸命な努力をしたのですが、昏睡状態が続きました。
平坦になったままの脳波がわずかに動き出したとき、私は看護師の名前を大声で呼び夢中で頬も少し叩いたようです。
そして彼女が目を見開いて私をじっと見たのです。

その後、意識の回復した彼女が語りました。
「美しい花がいっぱい咲いている丘の上の木陰で昼寝をしていた。気持ちよく眠っているのに、私を呼んで頬まで叩いて起こす人がいる。ひどい人がいるもんだと思って見たら先生だった」ということです。