病院死には問題がある

私はがんで死にたい 小野寺時夫

私は妻に先立たれ、介護をしてくれる人がいなくなりましたが、それでも自宅死が第一希望です。
私だけでなく、できることなら最期まで自宅で過ごしたいと思っている人が多いでしょう。
誰にとっても自宅は最良の安らぎの場であり、永遠の眠りにも自宅でつきたいのが自然な望みです。
しかし現実には、がん死する人の約85%が一般病院であり、在宅死はここ数年増加傾向にありますが約7%にすぎません。

日本の場合、死を迎える場所として治療を受けている病院を選ぶことがごく自然なことと受け入れられている傾向があります。
治療を受けた医師に最期まで診てもらうのは安心感があります。
大病院であれば、他の診療科の受信が必然になった時なども便利です。
しかし、大都市圏では末期がん患者さんは入院を拒まれる場合が増えてきています。
一般病院の最期は、ホスピスやクリニックにかかってから自宅で過ごす場合に比べて、みじめな終末になる可能性が高いことを私はこれまでの経験でよく知っています。

一般の病院は治療が主目的の施設ですから、死を迎える末期がん患者さんは医師や看護師にとって本心は「歓迎しない客」で、苦痛緩和が十分に行き届かなかったり、心の通う介護までできなかったりすることが多いのです。
医師や看護師が治療目的の患者さんのために、1日中息を切らして駆け巡っているようでは、末期がん患者さんの緩和ケア業務まで十分に行うのはもともと無理なのです。