治療を受けるべきか、否か

寿命が尽きる2年前 久坂部羊

妻の叔父(当時74歳)がすい臓がんになった時、叔母(叔父の姉)から相談を受けました。
「弟が手術のできないすい臓がんになったけれど、抗がん剤の治療を受けた方がいいか、受けない方がいいか」というのです。
叔父は体重が減りつつあったけれど、8月頃までは普通に生活していたそうです。
それがどうもおかしいということで、10月半ばに病院で診てもらうと、すい臓がんだと診断されたのです。
腹水もたまっているので、手術は不能で、抗がん剤の治療をすれば、来年の春ごろまで延命する可能性があり、治療をしなければ年内と言われたとのことでした。

叔父自身は、治療をすれば、もしかしたら春どころか夏、いや、もっと先まで生き延びられるかもしれないとの思いで治療を望んでいるといいます。
私は叔父自身のことなので、本人の気持ちを優先すべきではないかと叔母に伝えました。

叔父は11月に入ってすぐ入院し、抗がん剤の治療を受けました。
そして12月11日に亡くなりました。

叔母は残念そうにしていました。
こんな結果になるなら、やっぱり治療なんか受けなければよかった、治療さえしなければ、もう少し長く生きられたのにというわけです。
私は叔母に言いました。
「もし治療をしないで、年内ギリギリまで生きたとしても、亡くなったらきっとこう思いますよ。治療を受けていたら、もっと長く生きられたのに」と。