医療の進歩の影の部分

寿命が尽きる2年前 日下部羊

医療が進歩したおかげで、これまで治らなかった病気が治るようになったり、あきらめるしかなかった状況から回復できたり、寿命を延ばせるようになったりしたのは、ありがたいことです。

一方で、医療には影の部分もあります。
たとえば、がん遺伝子、ガンになりやすい遺伝子の変異は、見つけることができても、取り除くことも治療することもできません。

あるいは認知症。
認知症の種類や徴候が分かるようになりましたが、予防することも治療することも、今の段階では確実にはできません。
昔は、「もうろくした」とか、「ボケた」と言って、比較的に受け入れられていたのに、今は多くの中高年が神経をとがらせています。

延命治療も、さまざまな技術が開発され、死を引き延ばせるようにはなりましたが、元気な状態に戻すことはむずかしく、人としての尊厳のない状況をつくり出しました。