早期発見、早期治療が効果的?

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

がん検診は「早期発見、早期治療が効果的」という思い込みに基づいて行われています。
「思い込み」と言ったのは、早期発見、早期治療しても寿命は延びないからです。
早期発見、早期治療が効果的と言う人たちの根拠は、5年生存率が上がっているからというものです。

がんの場合は、治療してから再発や転移がなく5年間生きていれば、治ったとみなされます。
したがって、5年生存率が上がれば、治った人が増えたということで、早期発見、早期治療の効果があった、ということになるのです。
でも、本当にそうでしょうか?

検査技術の進歩によって、がんは以前よりもかなり小さい段階で発見できるようになっています。
以前ならば、がんが発見されてすぐ治療を受けても5年間生きられなかった人が、発見の時期が早くなったために、5年間生きられるようになった、ということなんです。
要するに、ゴールの地点は変わらないのに、出発が早くなったので、長く生きられたようにみえるだけ。
本当の寿命が延びたわけではありません。

その証拠に、がんで亡くなる人は減っていないのです。
検診が普及してがんの発見数は増えているのに、がんで死亡する比率は1960年以来ずっと下がっていません。

早期発見、早期治療で本物のがんが治るようになったなら、がんの発見数に反比例して、がんで亡くなる人も減るはずです。
ところが、そうはなっていません。
5年間生存できても、そのあとにがんで亡くなる人が大勢いるということです。