抗がん剤を使ったから・・・

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか 近藤誠

抗がん剤は心臓や肺、骨髄、腎臓など、健康なときには意識しない、しかしとても重要な臓器をダメにしていきます。
それなのに患者さん本人は、臓器のかなりの部分が死なないと異常に気付きません。
異常に気づくのは、心不全、腎不全、敗血症など重い症状が出た時で、その時はもう手遅れなのです。

ツイッターに「体調が悪くて悪くて」と書くほどの状態だったのに、梨元さんは3回目の抗がん剤治療を受けます。
今度は飲み薬で、8月18日から飲み始めましたが、20日にはもう飲み込めないほど弱ってしまいます。
水さえ飲むのがつらく、「薬、やめようかな・・・」とつぶやく梨元さんを見て、奥さんは医者に聞きます。
こんな状態なのに、それでも抗がん剤を飲まなければいけないのかと。
医者は「5日間は続けてください」と答えました。
患者の状態よりも、治療を続けることの方が大事だったのでしょう。

そして、翌日の朝、8月21日、梨元さんは亡くなりました。
まだ65歳でした。

結局、梨元さんは、抗がん剤を使っても2か月しか持ちませんでした。
というよりも、抗がん剤を使ったから、2か月しか持たなかったのです。