手術至上主義

私はガンで死にたい小野寺時夫

私が現役外科医だった時代の学会では、「手術至上主義」が支配的でした。
どんな進行がんでも積極的に手術する医師が「名医」といわれ、大学の教授にもなった時代が長く続いたのです。
私自身も、すい臓がんや肝臓がんなどに対して、患者さんのためにならない手術をたくさんやりました。
しかし、積極的な手術が無意味なことを次第に認識始め、1976年から私は進行すい臓がんは切除しないで、開腹下に大量の放射線をかけて胃腸バイパス手術を加えるという治療法を数年試みました。
そして、この治療法の生存期間が切除手術に劣らないことを知りました。

3年後、日本消化器外科外来学会の「すい臓がんの治療」のパネリストに選出され、治療成果を発表しました。
しかし、司会者の教授が最後に「外科医が手術以外の治療法に逃げるのは本末転倒で、外科医はあくまで手術で治すべきである」と総括したのです。
明確な成績を示しても手術以外の治療は認めようとしなかったのです。