強制退院

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

北村さん(59歳男性 大腸がん 余命3か月)がラジオ出演した時の声を紹介します。
僕は入院しているときは何もできなかったんです。
1日中、右も左も見ることができずに、ずっと天井を見ていた。
今は痛みが出たら自分で処置して取れるけど、病院に入院しているときには、痛み止めをもらうのにも結構大変だし、1日に何回ももらうっていうのは無理なんですよね。
強い薬によっては1日に何回までっていうのがあるんです。
薬がもらえないと痛みが取れないから、動かないようにしていました。

だから入院しているときは、着替えも便やおしっこの始末も全部看護師さんにやってもらう。
ご飯は一切食べませんでした。
そういう状態だから、私自身ももう長くないだろうと思っていました。

終末期に入り、病院の先生とお話しした時に
「北村さん、退院するときだよ、どうしますか? あなたはね、腸を3回も手術して短くなっています。だから、どれだけご飯を食べても吸収できないんですよ。点滴も死ぬまでつながないといけない。生きていくためには、点滴からの栄養と食べる栄養、両方ないといけません。いろんな痛みも管理しないといけない」
と言われて、緩和ケア病棟へ転院して、そこで死亡するんだということを知りました。
もう自分の生まれ育った家に帰れないんだと。
一度は緩和ケア病棟へ行くことで諦めたんですよ。