寝て死を待つよりは旅行を

私はガンで死にたい 小野寺時夫

胆のうがんのFさん(63歳 女性)は、抗がん剤治療を勧められて迷っていましたが、最終的にはホスピスで過ごしたいと思ってご主人と外来に来ました。
私が抗がん剤治療の効果について詳しく説明し、「私なら受けないでしょう」と話すと夫婦ともに納得しました。
Fさん夫妻は「担当医は治療優先で、バルト3国の旅行の計画は無視されました」と残念そうに話しました。
夫婦ともに教師で、子育てが済んだころから夫婦での海外旅行を楽しんでおり、次回はバルト3国を予定していたそうです。

私はすぐにバルト3国に行くことを勧めました。
「私なら、万一行き先で亡くなってしまうようなことになっても、寝て死を待つよりは旅行をします」とまで話しました。
その後夫婦でアラスカにも行き、帰国後まもなく急変して、ホスピスに来ることなく近所の救急病院に緊急入院して、翌日亡くなりました。

両親が私に感謝していたからと、娘さんがホスピスにボランティアで来るようになりました。

私は、患者さんの望み通りの生き方を最期まで叶えられるようにしています。
入院患者さんにも、ある程度元気な人には何かをするように私は仕向けています。