夜間セデーション

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

退院して4日後、岡さんの様態が急変しました。
12月26日 半身まひ。言語障害が起こり、自宅で脳卒中の治療を受ける。
12月27日 高熱、誤嚥性肺炎、昼夜逆転現象、せん妄で全く眠れなくなる。
この2日間の急変で、妻が再び絶望の淵へ突き落されたと不憫に思ったご主人は、最期まで一人で看護すると言って、徹夜で必死に看病しました。
12月29日 訪問診療に訪れた小笠原内科の医師と看護師が、疲労困憊のご主人に対してこう言いました。
「全然寝ていないでしょう。奥さまもご主人も苦痛がひどいようなので、”持続的深い鎮静”という選択肢もありますよ」

ご主人は、苦しむ妻の姿と毎日の介護で限界が来ていたのです。
同じ日、90キロ離れた中津川市へ在宅緩和ケアに言っていた私は、SNSに”重要”マークが出ているのに気づきました。
訪問診療に行った医師が、”持続的深い鎮静”の話をしたみたいなので、僕も今から岡さんの家に行って鎮静の話をすることにしました。

岡さんの家に到着した私は言いました。
「”持続的深い鎮静””という選択肢も確かにあります。でもこれは永遠の別れになるので、あくまでも最後の手段です。それよりも”夜間セデーション”で、奥さんに夜はしっかり眠ってもらって、ご主人も疲れをためないことが大事だと思いますよ。まずは、”夜間セデーション”をして、悪循環を断ち切りましょう」