今が一番幸せ

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

家にいられる喜びでいっぱいの伊東さんでしたが、以前から「痛みが取れなかったら入院する」と言っていました。
そこで、痛みと痛みへの不安をなくすためにPCAという「魔法のお弁当箱」を使うことにしました。
PCAは24時間投薬し続けることができるお弁当サイズの医療機器です。
痛みがある時にPCAについているボタンを押すと、モルヒネが1回分投与され痛みが取れます。
ちなみに1回分で約4時間効果が持続します。

このPCAの素晴らしいところは、痛みが出たら何回でも本人の意思でボタンを押せることです。
1日何回までと決められていると、「今使ったら次に痛みが出たときに使えなくなるかもしれない」と我慢してしまい、痛みが取れず悪循環になります。
でもPCAなら、我慢する必要がなく、安心感が得られると同時に、痛みを感じにくくさせる好循環を生み出すのです。

亡くなる1週間前、伊東さんが私たちにこんなポエムを聞かせてくれました。

台所の料理の匂いに癒される かつおぶしの香り
家族団らんの風景 生活の場だなあ
今が一番幸せ
天国にいるようだ  極楽にいるようだ
先生に「行ってもいいよ」と言われれば
このまま さよならでもいいけれど
「居てもいいよ」と言われれば
そりゃあ まあ 居たいわねぇ
あの世でもこの世でも どちらでもいい感じ
ありがとう