乳房温存療法

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

誤解がないように記しておくと、抗がん剤に治す効果も延命効果もないというのは、がんが塊を作る固形がんのことです。
急性白血病などの「血液がん」は、抗がん剤で治ることがあります。
そのこともあって僕は、血液がんの一種である悪性リンパ腫では、固形がんとは逆に積極的に抗がん剤治療に取り組みました。
その結果、以前と比べて治る人が大幅に増え、そのことを学会で発表すると、血液がん治療を専門とする内科医たちから「放射線科医にやられた」と言われました。

他方で、乳がんの乳房温存療法も始めました。
その当時、日本で施行されているすべての手術が乳房全摘術でしたが、1983年に実姉が乳がんと診断されたとき、全摘では可哀そうだと、欧米で普及しつつあった乳房温存療法を勧めました。
姉は今も健在です。

よし、すべての臓器温存を日本に広めよう。
僕は燃えに燃えて、あちこちに働きかけました。
そして思い知りました。
「どんなことがあっても手術を手ばなさい!」という外科医たちの決意が、いかに強固であるかを。