ガンになった時、告知を希望しますか?

なんとめでたいご臨終 小笠原文雄

ガンになった時、あなたなら病名や余命の告知を希望しますか?
私の経験上、告知をしない方がいいのは、「告知を希望していない患者さん」、もしくは「告知しなくても穏やかに暮らしていける患者さん」だけだと思っています。
それ以外の多くの方は、「真実を知りたい」とか「知ってよかった」と言います。
では、真実を知る前と知ってからでは、何が変わるのでしょうか。
告知は、患者さん一人の問題ではなく、周りの人たちとのかかわり方や医療の提供、そして生き方の選択ーすべてを変えるといっても過言ではありません。

真実を知らないと、治療しているにもかかわらず、体調が悪化していくことに「なぜだろう?」と疑問を持ち始めます。
「本当はもっと悪いんじゃないか、本当は死ぬんじゃないか」、心はそういう気持ちに支配され、周囲に対しての不信感が生まれて疑心暗鬼になります。
知らないことは不安を煽るのです。

気づいた時には死が迫り、やり残したことを悔やみ、その無念さと後悔の中で旅立つのは、真実を知るよりもつらいと思いませんか。
「終わりよければすべてよし」と言います。
真実を伝えず、最後の最後に地獄の苦しみを与えてしまった後悔は、取り返しがつかないのです。