がんもどきだった・・・

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

小澤さんの場合は、おそらくがんもどきですが、食道全摘手術を受けました。
そのため手術後は、「大手術で15キロやせた。1日に食事を4~5回とって体力回復に励んでいる」と、本人が言うような状態になりました。
その上、たびたび肺炎を発症し、公演への復帰と降板を繰り返し、ついに2012年3月には1年間活動を休止すると発表。
指揮という、体力を使う仕事はできない状態になってしまったのです。

しかし、運よく大変なことにはならず、13年8月には本格復帰ができました。
繰り返しますが、本当に運がよかった。
食道がん手術では、勘三郎さんのような呼吸機能障害、または肺炎などの感染症で亡くなることがとても多いのです。
手術の時に胸の中をいじるので、どうしても呼吸機能が落ちたり、胸の中に感染症が起きたりするからです。

同様に、桑田佳祐さんも運がよかった。
桑田さんは10年7月に食道がんが見つかり、食道全摘手術を受けて8月に退院。
この年の大晦日に、スタジオから中継で紅白歌合戦に出演するというサプライズで、復帰を果たしました。
桑田さんの場合も検診で見つかった初期がんで、手術から4年経っているため、今の時点で転移が出てきていなければ、がんもどきだと僕は思います。
桑田さんは、お父さんとお姉さんをがんで亡くしているため、年に2回がん検診を受けていたそうです。

そのような人が、がんが見つかったとき、「治療しないで放置する」ことを選択するのはとても難しい。
治療せずにいることは、気持ちの上で無理だと言ってもいいでしょう。