24時間巡回型ヘルパー

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

なっちゃんが自宅で緩和ケアを受け、3年がたつと大好きだった散歩にも行けなくなり、這いずるようになりました。
寒さが厳しくなったころ、成年後見人の甥から電話がありました。
「小笠原先生、叔母が這いずって土間に落ち、冷たくなって発見されたらさすがに耐えられません。でも以前、入所を勧めたら、首に包丁を当てて拒否しました。叔母がそれほど家にいたいなら、最期まで家にいさせてあげたいと思います。だから土間で発見されないようにお願いします」
「では、夜間セデーションを行いましょう。なっちゃんは認知症なのでご家族や代理の方に同意をしていただきたいんです」
「夜、ぐっすり眠ってもらえれば安心ですね。お願いします」

その1か月後、なっちゃんが寝たきりになると、甥は、「できれば夜間も誰かに来てもらいたい」と希望しました。
住み込みの家政婦が来てくれるまでは、24時間巡回型ヘルパーに来てもらうことにしました。
24時間巡回型ヘルパーとは、1回30分の訪問を1日6回、4時間おきにしてくれる介護サービスです。

その日の当番は、なっちゃんの大好きなヘルパーでした。
深夜0時にヘルパーが訪問すると、なっちゃんはいつもと違ってお仏壇の方を向いて寝ていました。
ヘルパーが見守りを終えて帰ろうとしたとき、なっちゃんの呼吸が止まったのです。
なっちゃんは大好きなヘルパーがいる時に旅立ちました。