陽子線や重粒子線

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

「陽子線って何ですか? 重粒子線って効くんですか?」などと、患者さんに聞かれることがあります。
陽子線と重粒子線は、どちらも放射線の一種です。
従来の放射線(X線)は、体の奥に行くほど線量が減ってしまうのに対して、陽子線と重粒子線は減らないという特徴があります。

そのため、がんが体の奥の方にある場合、それをX線で叩こうと思ったら減る分を計算に入れて、かける線量を多くしなければなりません。
ということは、体の表面にある正常細胞が大きなダメージを受けてしまうのです。
陽子線と重粒子線はそのようなことはありません。

その性質から、陽子線と重粒子線に期待が寄せられ、医療の現場で使えるようにしようと研究が始まったのです。
ところがその一方で、医療機械が発達してきます。
機械の性能が格段に良くなって、体の奥にあるガンにも、X線をピンポイント照射できるようになったのです。
つまり、陽子線や重粒子線を使わなくても、体の奥の方のがんを治療できるようになったわけで、この意味では陽子線と重粒子線の存在価値はなくなりました。