陽子線と重粒子線

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

陽子線は、同じ線量ならば細胞を殺す効果はX線とほぼ同じです。
ただ、目の中にできた黒色腫(メラノーマ)や、脳の近くにできた脊索腫など、ごく少数のがんには効果を発揮します。
副作用が比較的少なく、効果のあるガンもあるため、日本に1台くらいなら陽子線の治療器を残してもいいと思います。

しかし、重粒子線は危険が非常に大きい。
細胞を殺す効果がX戦の数倍もあるために、副作用が強く出てしまうのです。
たとえば、口の中のがんで重粒子線治療を受け、その数年後に僕の外来に来た患者さんがいました。
その人は、治療から3か月経ったところで、口が数ミリしか開かなくなり、流動食しかたべられなくなったそうです。
その他にも、子宮頸がんの重粒子線治療で膀胱や腸に穴が開き、腸から大便や小便が出るような重大な障害が頻発しました。
こんな危険を冒さなくても、治療するならX線で充分です。
重粒子線の治療器は不要だと思います。