過去や未来が見えるから心配する

寿命が尽きる2年前 日下部羊

あなたは常に何かを心配していないでしょうか?
病気の心配、事故の心配、災害の心配、お金の心配、受験の心配、仕事の心配、恋愛の心配、家族の心配、将来の心配。

水木しげるさんの漫画に「1つ目小僧」という短編があります。
話は、メガネ出っ歯の青年が山の中の1軒屋に迷い込み、坊主頭の1つ目小僧と出会う所から始まります。
青年が「実は僕、今お金がないばっかりに失恋中なんです」と訴えると、1つ目小僧は「近頃のおなごは勘定高いからな」と嘆きつつ、青年の額にもう1つの目をつけてくれます。
3つ目になれば、未来が見えるというのです。
3つ目になった青年は、競馬や株で大儲けし、かつて自分に肘鉄を食らわせた彼女に言い寄ろうとしますが、念のため10年後の彼女を見ると、思った以上に老けていて、思わず逃げ出します。
すると、風で第3の目を隠していた帽子が飛び、「すべてが地獄のような未来」が見えてしまい、絶望して先の1軒屋に逃げ込むと、1つ目小僧に「どうだ、いっそ1つ目になったら」と誘われます。
1つ目になれば子供同様、今しか見えないから心配がなくなるというのです。

人間は過去や未来を見るから、過去を振り返っては悔やみ、未来を思っては起こっていないことを心配するのです。