自覚症状がないうちは何もしない

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

手術や抗がん剤治療を受けたせいで、体はボロボロだったと思いますが、たかじんさんは不屈の闘志で体力回復に励みます。
そして2013年3月には、1年2か月ぶりにテレビに復活しました。
しかし、その1か月半後には倒れて入院、食道周囲のリンパ節に転移があることが分かって、再び無期限休養に入りました。
その後、たかじんさんは月に一度通院して抗がん剤治療を受けていましたが、がんが治らないことを本人は覚悟していたそうです。
そして2014年1月3日、食事中に食べ物をのどに詰まらせ、病院に運ばれたのの、帰らぬ人となりました。

食道がんの手術をすると、ものを飲み込む機能が落ちて、食べたものや吐いたものが気管に入りやすくなってしまいます。
食べ物が気管に入ることを誤嚥といいますが、たかじんさんは食道がんの手術のせいで誤嚥しやすくなっていたために、食べたものが気管に入ってしまったのです。
手術さえしなければ、誤嚥で亡くなるなどということはなかったはずです。

転移がある場合、食道を切り取って胃とつなぐなんていう、ものすごく危険な手術をしてもがんは治らない。
手術で食道のがんを取っても、やがて肺や肝臓などの重要な臓器に転移が表れるため、生存率が上がるわけではないのです。
それどころか、手術そのものによって死んでしまうことも珍しくありません。

食道がんは、自覚症状がないうちは、何もしなくていいのです。
がんが大きくなってものが飲み込みづらくなったら、放射線を当てるなどして、がんを小さくすればいい。
それが、生活の質を高く保ちながら長く生きる方法です。