勘三郎さんの場合

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

勘三郎さんは、2012年6月1日に、人間ドックで食道がんが発見されました。
このとき、自覚症状はまったくありませんでした。
すぐに築地の国立がんセンター中央病院に行きましたが、出てきた医者が勘三郎さんの顔を見ようともしなかったため、医者を変えます。
同じ食道がんで手術を受けて復活した桑田佳祐さんに主治医を紹介してもらって、その人にかかることにしたのです。

6月4日、勘三郎さんはがん研有明病院に行き、主治医に会います。
そして「治しましょう。大丈夫ですから、心配いりません。がっぷり四つに組んで勝ちに行きましょう」と言われました。
桑田さんを治した名医だというので、最初から信頼している上に、こんなふうに言われたら「手術すれば治るんだな」と思うにきまっています。
でも、がんは転移する能力のある本物のがんだったら手術をしても治りません。
それに、食道がんの手術が危険なことは、たかじんさんのところで述べたとおりです。

6月7日には手術する予定で、勘三郎さんはがん研有明病院に入院します。
ところが手術前の検査で、右肩のリンパ節に転移があることが分かりました。
肩に転移があるのだから、ほかにも転移がある可能性があると医者は説明し、抗がん剤治療をしてから手術をすることになりました。

しかし、転移している可能性があるのに、手術する意味があるのでしょうか?
肩のリンパ節に転移があるということは、今は目に見えなくても、やがてほぼ確実に肺や肝臓に転移がんが現れてきます。
危険を冒して食道がんを取っても意味がありません。
そんなことは、医者にもわかっていたはずなのです。