自然な形で最期を迎えた人を看取ると

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

みなさんは、多かれ少なかれ、死というものに恐怖心を抱いていると思います。
当然のことながら、死を経験した人は誰もいません。
また、医療の進歩や核家族化などにより、現代人は昔に比べて、死に接する機会が減ったと言われています。
正体の分からないものに、人は不安を覚えるものです。
しかし一度、老衰などにより自然な形で最期を迎えた人を看取ると、多くの人は、死が非常に穏やかであることに驚き、恐怖心を手放します。

穏やかな死は、おおむね次のような形で訪れます。
まず歩ける距離が少しずつ短くなり、ベッドや布団で過ごす時間が長くなります。
次に食事量が減っていき、昼間でも寝ている時間の方が長くなっていきます。
やがて死が間近に迫ってくると、呼吸が浅くなって回数も減り、意識のない状態が長く続いたのちに、ひっそりと息を引き取ります。

以前、ある末期ガンの患者さんの看取りにかかわったことがあります。
その患者さんは、1か月前には食事は家族と同じ量を召し上がっていて、車を運転して会社に行くことができていたそうです。
しかし、私が初めてご自宅に伺ったときには、患者さんは歩くことができなくなっていて、食事もほぼ水分だけとなっていました。

こうした身体の状態から、私は残された時間が少ないと判断し、ご家族に伝えたいことは、今の内に伝えてあげてくださいとお話ししました。