自分の人生観を大切に

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

食道がんも、がんが大きくなれば、ものが飲み込めなくなります。
その場合は、放射線をかけてみて、それでがんが小さくなれば食べられるようになります。
大腸と同様に、ステントを入れて食道を広げ、その中に食物が通るようにする方法もあります。

咽頭がんは、がんが大きくなって気道を塞いでしまえば窒息死します。
でもその前に息苦しくなります。
咽頭がんは、放射線でがんを小さくすれば窒息しません。

子宮頸がんは、がんが大きくなると尿管が膀胱に入るところが塞がれて、尿が出なくなって腎不全で死ぬことがあります。
でも、その前に出血などの自覚症状があります。
自覚症状が出た段階で手を打てば、すぐに死んだりはしません。
子宮頸がんも、放射線で小さくすればいいし、腎不全になっても人工透析をすれば生きていけます。

しかし中には「対症療法も受けたくない」という患者さんもいます。
「一切の治療を受けたくない」と言う人に対しては、たとえ寿命を延ばすためであっても僕は治療を勧めません。
僕の患者さんの中に、子宮頸がんだったけれど完全放置を望み、最後は腎不全になって亡くなった人がいました。
でも、それはその人の決断だし、人生観です。
その人が最期までその人らしくあることを尊重します。