腫瘍マーカー

寿命が尽きる2年前 日下部羊

友人の内科医が、30代のはじめに、なんとなくCEAという腫瘍マーカーを測ってみたら、正常値を超える値が出てしまいました。
腫瘍マーカーは、ガンによって特徴的につくられるタンパクで、血液検査で正常か異常かが分かります。

CEAは、肺ガン、食道がん、胃ガン、大腸がん、胆道ガン、すい臓がん、乳がんなどで上昇します。
彼は子どもが小さかったこともあり、まだ死ぬわけにはいかないと、自ら全身を徹底的に調べました。
検査の結果、いずれも問題なしの結果で、安心しかけたところ、最後に肝臓に小さな影が見つかり、ガンかもしれないと目の前が暗くなったそうです。
すぐには診断結果がつかず、しばらく経過を見ることになって、最終的にそれが良性の血腫だと分かるまで、1か月以上かかりました。

その間、万一のことが何度も頭をよぎり、妻子のこと、親のこと、自分の将来のことを考えると、心が休まることはなかったと話していました。

結局、CEAの上昇はたまたまだったということになり、彼は自嘲と自戒を込めて私にこう言いました。
「もう二度と腫瘍マーカーはやらない」