点滴輸液

私はガンで死にたい 小野寺時夫

一般病院では、ガン末期でも、食事が摂れなくなるとすぐ点滴輸液をするのが一般的です。
点滴輸液をすれば栄養をたくさん補給できると考えている人が多いのですが、実際には普通の点滴ではほんの少量しか補給できません。
だからといって、栄養を十分補給できる中心静脈栄養をやればよいとも限りません。
末期がん患者さんでは、点滴輸液が本当に有益なのかに関して様々な問題があり、単純に有益とはいえず、むしろ行わない方がいい場合が多いと思います。

点滴輸液でえられる栄養量は、一般に用いられる輸液剤500ml.で100㌔㌍、特別の栄養補給用輸液でも500ml.で210㌔㌍しかありません。
1日に1000ml.点滴しても人体の最低必要量の1/5~1/3に過ぎないのです。
やらないよりはやった方が多少の延命効果はあるのですが、あくまで「多少」であり、普通の点滴輸液だけでよい状態での長期の延命は得られません。

胸やお腹に水が溜まっている、むくみがある、呼吸がひどく苦しく痰の量が多いなどの場合には、点滴輸液量が多いと症状が悪化することがあります。
これを予防するためには、点滴を長時間かけて行い、利尿剤を併用するなどが必要です。
痛みなどの苦痛が強いときに緩和ケアが十分でないのに、点滴輸液で延命を図るのは、苦痛を長引かせることになります。