治療を受けないで亡くなった内科医

寿命が尽きる2年前 日下部羊

死ぬことを考えるのを嫌がる人が多いようですが、その理由は、死を前提にすることがネガティブだと感じているからでしょう。
死を意識すると、くだらないことで腹を立てたり、ありふれた楽しみに心を奪われたりする余裕はなくなります。
裏を返せば、些細なことでムカついたり、傷ついたり、誘惑に負けて気を散らしたりするのは、いつまでも元気な今が続くと、油断しているからに他ならないということです。

自ら1年以内の死を予測して亡くなった内科医のことを書いておきます。
三浦市立病院の院長だった丸山理一氏です。
丸山氏はエックス線検査で、自らの胃ガンを診断した後、治療をしないことを選択して、1991年に62歳で亡くなりました。
診断から9カ月後のことです。
氏は診断後もプールで泳いだりして、普段通りの生活を続け、精神状態も極めて平穏だったようです。
治療を受けないと決めたのは、長生きをしすぎて、悲惨な状態になった患者さんを多く見てきたからでした。
治療を受けないのは独善的だとか、日医学的だとかという批判があったそうです。

その批判に対し、丸山氏は、元々ガンで死ぬことを恐れていたわけではないし、「62歳ならもういいわ」という気持ちもああったそうです。
いろいろな死に方はありますが、ガンになったらそのままにしておけば、普通には1年持つことは難しく、2年は無理でしょう。

そういうこともあり、今後、人によってはある年齢以上になった場合、1年くらいで確実に死ねるガンによる死を、歓迎すべきものと感じられることもあるのではないかと言っています。