最期まで自分の好きなことをしながら

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

誤嚥性肺炎を治すには、入院なら2週間、在宅ホスピス緩和ケアなら1週間と説明すると、山北さんは自宅療養することが決まりました。
その後は訪問看護師が毎日点滴の訪れ、さらには言語聴覚士もケアに入りました。
すると山北さんは再び飲んだり食べたりすることができるようになりました。
ところが今度は床ずれ(褥瘡)ができてしまったのです。

訪問看護師が、山北さんの褥瘡の評価を行いました。
山北さんには、創傷被覆材を張る方がいい、またベッドは健康な時に使っていたものなので少し硬いようです。
耐圧分散寝具に帰るのはどうでしょう。
栄養状態もよくないようなので、管輅栄養士に入ってもらうことが必要ではないでしょうか。
その結果、褥瘡は完治し、その後も再発することはありませんでした。

12月に入ると山北さんは、デイサービスの通所を再開です。
しかし28日には、山北さんはいつ亡くなってもおかしくない状態になります。
それでも山北さんは、デイサービスを欠かしません。
そこでデイサービスに、「もし異変が起きても救急車は呼ばず、小笠原訪問介護ステーションにお電話をしてください」と連絡を入れましたが、当の山北さんはデイサービスを楽しんで帰宅しました。
そして29日、旅立ちが近いと連絡を受けた娘さんやお孫さん、ひ孫たちが集まりましたが、肝心の山北さんは自宅にいません。
亡くなる当日もデイサービスを満喫していたのです。

デイサービスから帰宅した山北さんは、その夜、みんなに見守られながら旅立たれました。