在宅ホスピス緩和ケアって何ですか?

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

水野さん(66歳 女性 肺がん)は、肺がんが脳に転移し余命1か月と宣告されました。
母の余命を聞いて、嫁ぎ先の沖縄から帰省した長女が病院に駆けつけると、ベッドの柵にしがみつきながら、痛みに耐えて苦しむ母の姿がありました。
久しぶりに会った母の変わり果てた姿に「いつも優しくて穏やかな母が、どうしてこんな鬼の形相に・・・」とショックを受けると同時に、「何とか痛みをとってあげたい」と思った長女は、妹と相談して転院を考えました。

2009年3月23日、小笠原内科の相談外来で、次女は開口一番尋ねます。
「先生、在宅ホスピス緩和ケアって何ですか?」
「痛みを取り、笑顔で長生き、ピンピンコロリと旅立つことですよ」
と、私がいろいろな事例を交えながら詳しく説明すると、次女が言います。
「先生、母は痛くて苦しんでいるんです。何とか痛みを取ってください」
そこで、緊急退院の手配をしました。

3月24日退院。在宅ホスピス緩和ケアを開始。ソル・メドロールの点滴やモルヒネを使い、看護師がフットマッサージを行うと痛みが取れました。
25日。笑顔になりました。4月になると、水野さんはびっくりするほど元気になります。
4月4日。桜咲く、木曽川河畔に行き幸せなひと時を過ごしました。
21日。草むしりをしたり娘たちと朗らかにおしゃべりをして過ごしましたが、ついに体力の限界が来てしまいます。
24日、9時。旅立ち。

歩けなくなるまでは朗らかに生き、歩けなくなったら旅立つ、まさにピンピンコロリでした。