教育的在宅緩和ケア

なんとめでたいご臨終 小笠原文雄

大切な人を亡くしたとき、その悲しみを少しでも和らげ、遺族の心に寄り添うのがグリーフケアです。

ある日のこと、岐阜県内で開業している清水医師からこんな電話がありました。
「小笠原先生、末期がんで一人暮らしの木村さん(70歳 男性)が、退院を希望されていますが、うちの市には、一人暮らしの在宅看取りをしたことのある医師がいないようです。唯一経験のある僕も、小笠原先生に主治医をしてもらった一度だけです。でも、退院調整の看護師から”ほかに頼める医師がいない”と言われたので、今回も教育的在宅緩和ケアでの連携をお願いできませんか?」
そこで私はこのように返事をしました。
「大丈夫だよ。今回は清水先生が主治医をして、僕はサポートするね」

その後、退院した木村さんの自宅で多職種カンファレンスを行いましたが、木村さんは高熱があり、むくみを訴え、痛み止めを飲んで、何とか伝い歩きができる状態でした。

在宅ホスピス緩和ケアを開始してから数日後、娘さんから電話がありました。
「小笠原先生、父の様子はどうですか?」
「穏やかですよ。一人暮らしの方の在宅看取りを40人ほどしましたし、清水医師のサポートもしますので安心してくださいね。もしもお父さんが入院したいと言ったら、入院してもらいますからね」
私がテレビ電話で木村さんの様子を見せると、娘さんは喜んでいました。