放射線もやりすぎは危険

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

僕はずっと、「医者に手術を勧められたら、放射線にしてくれと言ったほうがいい」と言ってきました。
手術が不要になることが多いし、放射線は手術と違って臓器を残せるから体へのダメージが少ない。
抗がん剤のような全身に及ぶ毒性もないから、抗がん剤と比べても放射線の方がいい。
というものの、使い方によっては放射線も重い副作用が出ることがあります。
危険がないわけではないのです。

そもそも放射線を浴びれば被爆します。
治療の場合は、浴びる線量を適正にするから大丈夫なわけで、大量に浴びればその害は計り知れません。
また、放射線をがんだけにかけるのは非常に難しくて、どうしても周辺の正常細胞にかかっててしまうのです。
近年開発されたピンポイント照射ができる機械を使っても、それはが同じです。

ところが近頃、転移が出たら1つ1つピンポイント照射で叩いていく、という病院やクリニックが出てきてしまいました。
これまでは、放射線で1つずつ叩くのは大変だから、抗がん剤で一気にやりましょうということだったのです。
それが、抗がん剤はどうも良くないみたいだというので、それならばピンポイントで1つずつ狙えば何とかなるんじゃないかとなったのです。

しかし、これをやると早く死んでしまうんです。
ピンポイント照射でも正常細胞をある程度は殺してしまう上に、がんが後から後から出てきてきりがない。
そのため、出てきたガンを次々叩いているうちに、放射線の害が積み重なって、臓器がだめになってしまうのです。