意味のない手術

私はガンで死にたい 小野寺時夫

ホスピスには、手術後に再発した患者さんがたくさん来ます。
がんの外科医である私は、手術後半年以内に再発した例のほとんどは、最初から手術適応がなかったと考えています。
外科医は、「手術しなければ〇か月位しか命は持たない」などと言うことがしばしばありますが、本当は、手術をしない患者さんやバイパスやステントだけの患者さんを多くは診ておらず、手術をしないで長生きしている患者さんの経験があまりないのだと思います。

大腸がんの肝転移30個以上を「名医」に切除してもらったという女性(63歳)が、5か月後に再発し肝機能が著しく悪くなってホスピスに来ました。
この方はある病院で、大腸がんの手術2年後に3個の肝転移の切除手術を受けたのですが、そのまた2年後には無数の転移が発見され、「これ以上は治療ができない」と言われました。
そのとき、肝臓がんの手術の「名医」として評判の高い元大学教授が60個もの肝転移を切除したというテレビを見て、この名医に手術してもらいました。
でもこの手術後に体調不良が続き、6か月後、無数のがん再発による高度の肝機能障害で、自宅生活が困難になったのです。
「名医」でなくても、エコーを使えば小さいがんでも切除できますが、こういう手術は意味がありません。