子孫の繁栄のために

生物はなぜ死ぬのか 小林武彦

サケは産卵とともに死に、死骸は他の生物の餌となり巡り巡って稚魚の餌になります。
ムレイラガネグモの母蜘蛛は、生きているときに自らの内臓を吐き出し、生まれたばかりの子に与え、それが無くなると自らの体そのものを餌として与えます。

一方人の場合は、死に対する恐怖が非常に強く、身内の死に対しては大変なショックを受けます。
死に対してショックを受けるのは、人が強い感情を持つ生き物だからです。
このように感情豊かに発達した脳とは裏腹に、身体の構造は他の動物とあまり変わりません。

生物が死ななくてはいけない理由は2つあります。
1つめは、食料や生活空間の不足です。
数が増え過ぎては、食べるものが不足するからです。
2つ目は、多様性のためです。
生物は激しく変化する中で存在し続けるものとして誕生し、進化してきました。
その性質のおかげで、現在の私たちを含めた多 種多様な生物にたどり着いたわけです。
そのたくさんの試作品を作るために、その材料を確保しなくてはななりません。
新しい生物をつくるため、その材料を確保するためには古いタイプを壊して、その材料を再利用しなくてはなりません。
そのために、生物は死ななくてはならないのです。