子どもの都合で・・

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

ご主人に付き添われながら小笠原内科に通院していた古川さん(72歳 女性 慢性関節リウマチ)は、両下肢の障害によって歩けなくなると、在宅緩和ケアに切り替えました。
ところがある日、古川さんのご主人が2週間、入院することになったのです。
ご主人と2人暮らしの古川さんは、しばらく一人暮らしになります。
すると、離れて暮らしていた息子さんがこんなことを言うのです。
「一人暮らしなんてだめだ。父が入院している間、母にも入院してもらう」
古川さんは入院を拒否しましたが、子供には逆らえません。

古川さんは車いすですが、料理はできます。
ご主人がしていた洗濯や買い出しは、ヘルパーに頼めば大丈夫です。
末期がん患者さんでも、一人で最期まで家で暮らせる時代なのです。
そこで私は、息子さんを説得しに行きました。
「一人暮らしでも大丈夫ですよ。お母さんは足が悪いだけだし、何も心配いりませんよ。お母さんが”家がいい”と言っているのだから、家にいさせてあげたらいかがですか?」
「分かりました」と息子さんが言ったので、納得してもらえたと思いました。