在宅ホスピス緩和ケアをめざして引っ越し

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

谷さん(65歳 女性)は、名古屋の病院で入退院を繰り返しながら、乳がんの治療をしていましたが、がんが骨に転移し痛みで苦しんでいました。
そこで在宅ホスピス緩和ケアの話を聞きたいと小笠原内科の相談外来に来ました。

「私は病院のあの重い空気が耐えられないんです。みんな、目の焦点が虚ろげで、苦しそうでした。あの患者さんたちのように、いつか自分も重い空気の中で死ぬのかと思うと嫌になり、入院はやめました」
「そうなんだ。重い空気が嫌いなんだね。自由な空気はおいしいからね」
「そうなんです。私も苦しまず朗らかに生きられますか? 私もそんなふうに終末期を過ごしたいんです」
「うん、過ごせると思うよ」
「でも私、家が名古屋なんです。岐阜からはさすがに遠いですよね?」
「う~ん、そうだねえ。谷さんの地元の医師と連携して在宅ホスピス緩和ケアをしてもいいよ。安心してください」
「ありがとうございます。でも私は一人暮らしで身軽なので、この近くに引っ越したら、最期まで診てもらえますか?」
「もちろんですよ」

すると谷さんは、部屋を探し始め、小笠原内科の近くにアパートを見つけて契約したのです。