問題は解決しなくてもいい。解消できればいい。

明日この世を去るとしても今日の花に水をあげなさい 樋野興夫

世の中には、どれだけ突き詰めて考えても仕方のないことがあります。
たとえば「なぜ、自分はがんになってしまったのか」がそうです。
「食生活がよくなかったのか」
「不規則な生活がよくなかったのか」
「ストレスが影響しているのか」
このように、がんという病気は私たちに「なぜ?」を考えさせる病気なのです。
ところが、どれだけ「なぜ?」を問うてもはっきりした答えは得られません。
私たちにできるのは「なぜ?」を問うことではなく「いかにして」を考えることです。

東郷平八郎は、晩年喉頭がんに苦しんでいました。
息をするのも、水を飲むのも、ものを食べるのもとにかく痛い。
その痛さに耐えられず、ある先生に相談したところ次のように告げられたそうです。
「その病は痛いものです」
すると不思議なことに、それ以来、東郷は痛いという言葉を口にしなくなったといいます。
もちろんがんが治ったわけではありませんので、問題は解決していません。
しかし言葉の力によって、目下の問題を解消できたのでしょう。

問題は必ずしも解決しなくてもいい。
解消できればいいのです。