創造力

下村健一氏著「創造力のスイッチを入れよう」から

下村氏と都内の小学生が8人が街中を歩いていると、塀を押しのけている大木が有りました。大木が生長してじわじわと塀を道路側に押し出しています。

小学生は「塀は必死になって耐えているけど、もうヒビが入っているよ」「塀が壊れるまで時間の問題だな」と話し合っています。そこで下村氏が「ちょっと想像して。この塀を壊そうとしていることについて、どう思っているんだ?と聞かれたらこの木は何と答えるだろう?」と子供たちに聞きました。

「塀がじゃまだ」「そもそも俺の方が先輩なんだから」「育ちたい、もっと生きていたい」「塀から離れろって言われても困る」というような意見が出ました。「じゃあ、今度は塀の立場に立って言い分を考えてみよう」と下村氏が言いました。

「いててて、痛いよ。もうこの体勢きついんだから」「もうダメ何とかして」いろいろな意見が出ます。そこで下村氏が「でもさ、塀としては木の成長を邪魔している自分が申し訳なく思っているんじゃないの?」と問いただします。

「いや、でもこの原因を作った人間に対して怒りが・・」「何でこんなに木の近くに俺(塀)を作ったんだ」「何で俺が木に壊されなくちゃいけないんだ」という意見が出ました。このタイミングで下村氏が「じゃあ、今ここで塀と木が話し合ったらどういう結論になるの?」と聞きます。

小学生一同「人間が悪い!」「こんなに近くに塀を作った人間をこらしめてやる」 そこで下村氏「じゃあ今、木も塀もこの塀を作った人間が通りかかるのを待っているの?人が通るたびに、この人は違う!とか言って、はじけないようにこらえているのかな?」

「関係ない人を巻き込みたくないんだぁぁ!」

 

この場面の想像は「木が悪いのか、塀が悪いのか」から始まって、僕たち人間が悪いという思わぬ結論に達しました。こうやって、他者への想像を広げていくうちに「他人事」だと思っていた話が、意外と「自分事」でもあると気づきます。

私たちも、自己主張する前に「もし自分が相手の立場だったらどう思うだろう?」という視点を付け加えられるといいなあ、と思います。