健診でがんを見つける理由はありません

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

職場の定期健診で、バリウムを飲んでレントゲンを撮ったら「胃に影があります、精密検査をしてください」と言われた。
仕方がないので胃カメラを飲んだら、ごく小さながんが見つかった。
びっくりしていると、医者に「早期発見できてよかったですね。すぐに切りましょう」と言われて、あれよあれよという間に入院、手術することになってしまった。
あなたの周りにも、こんな人がいるのではないでしょうか。
でも、手術を受ける必要はありません。
自覚症状がなくて健診や人間ドックで見つかった初期がんは、ほとんどが「がんもどき」です。

では具体的には、どんなケースが「がんもどき」なんでしょうか?
たとえば健診で見つかった胃と大腸の早期がんは、ほとんどが「がんもどき」です。
しこりがなく、マンモグラフィーで見つかった乳がんは、99%「がんもどき」です。
出血などがなく、細胞診で見つかった子宮頸がんも99%「がんもどき」。
PSA検査で見つかった前立腺がんは、9割以上「がんもどき」。
だから治療する必要はないわけです。

こう言うと「がんもどきの可能性が高ければ放置したほうがいいけれど、本物のガンの可能性が高ければ治療したほうがいいんでしょう?」と聞く方がいますが、そうではありません。
がんが本物だったら、見つかった時点で既に転移が体のどこかに潜んでいるから、治療しても寿命は延びません。
がんもどきならば転移はしないし、放っておいても命に別状はありません。
どっちにしても治療する意味がないし、治療をするとかえって命を縮めるから、治療しないほうがいいのです。

したがって、健診を受けて、わざわざがんを見つける必要はないのです。