モルヒネは天の恵み

私はガンで死にたい 小野寺時夫

鎮痛剤は身体に悪く、特にモルヒネは中毒になるお思っている人がいますが、それは誤りです。
モルヒネなどを、ためらわずに必要なだけ使って、苦痛を十分にとるのが国際的な常識なのです。
モルヒネは患者さんにとっては「天の恵み」といってよく、なくてはならない鎮痛薬なのです。
がん患者さんに対するモルヒネ使用量は、その国の文化レベルを示すといわれています。

がんによる体の苦痛で最も多いのが「痛み」で、次いで「呼吸苦」です。
その他、腹や胸の「圧迫感」、上でや脚の「しびれ」、身の置き所のない「だるさ」、「不眠」などがあります。
がんによる痛みが生じるのは、がんが神経細胞の多い周辺組織に食い込んで神経を圧迫するためです。

がんの骨転移には、部位によっては放射線照射が大変有効です。
脚の痛みやしびれ、がんの骨髄神経への浸潤やすい臓がんによる痛みが強い場合、「神経ブロック」といってアルコールで神経を麻痺させたり、骨髄腔に細い管を入れて麻酔薬を持続注入したりすることもあります。
呼吸苦にもモルヒネが最良です。
病状によっては、ステロイドホルモンを併用します。

疼痛緩和はモルヒネの量を増やせばいいというものではなく、上手な疼痛緩和にはモルヒネ以外の苦痛緩和法を適切に併用することがカギです。
患者さんによっては、抗うつ薬の併用が鎮痛効果を高めることもあります。
モルヒネの必要量も痛むときだけ5mgの頓服使用から始まり、麻酔薬と併用して1日1000mg以上の持続注射まで症状によって差があります。