なんと息子さんが救急車を呼んでしまった

なんとめでたいご臨終  小笠原文雄

ALSで旅立ちが近づいていた宮田さん。
なんと駆けつけた息子さんが救急車を呼んでしまいました。
宮田さんは、搬送先の病院で人工呼吸器をつけられ、生ける屍になってしまいました。
人工呼吸器をつけている患者さんの多くは、苦しさのあまり呼吸器を外そうとします。
だから多くの病院では、筆談の時以外は、苦肉の策として患者さんの手を縛ることがあるのです。

宮田さんは、1年間も人工呼吸器をつけたまま生き、病院で亡くなりました。
この事例で痛感した1つ目の問題は「何かあったら救急車を呼ぶ」という発想が日本の常識になっていることです。
離れて暮らすご家族は、何かあると救急車を呼ぶ確率が高いので、救急車を呼ばないためには、ご家族が患者さんの想いや病状、治療方針などの情報を共有、閲覧できるアプリがとても有効なのです。

2つ目は、病院の医師や看護師は「何かあったら、すぐ病院に来てね」と言います。
「本当に入院が必要な時だけ来てね」という真意を誤解し、安易に救急車を呼んでしまうと、苦しい延命治療をされたり、最期まで家にいたいという願いが叶わなくなったりと、地獄の苦しみを味わいかねないのです。