そこにいるだけで価値のある存在

明日この世を去るとしても今日の花に水をあげなさい 樋野興夫

ガンで療養中の高齢の女性。
いつも明るい彼女がふと本音をもらしました。
「家族には迷惑をかけたくない、ずっとそう思ってがんばってきました。それなのに寝たきりになってしまって、みんなに迷惑をかけるばかりです。先生、早く私をあの世に送ってください」

そんな彼女のもとには頻繁に見舞客が訪れます。
先日は孫娘が「おばあちゃん」とやってきました。
彼女は、孫の洋服を見て「今日もかわいい恰好をしているね」と明るく声をかけます。
すると孫は「かわいいでしょう。自分でアルバイトして買ったんだよ」と笑顔で答えます。

私は2人のやり取りを見て、後で彼女に言いました。
「たとえ寝たきりであっても、あなたには十分に生きている価値がある。あなたの存在、優しい笑顔、思いやりのある言葉がお見舞いに来てくれた人たちに勇気づけたり、明るい気分にしたりしているではありませんか」
あなたは、ただそこにいるだけで価値がある存在なのですよ。