がんもどき理論とは

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

がんもどきは放っておいても転移しない。
本物のがんは、その時転移が見つからなくても、いずれ転移が現れる。
こう言うと、「治療して完治した場合をがんもどきと言い、完治しなかった場合を本物のがんと言っているだけじゃないの? それって、後出しじゃんけんでは?」と言う人がいます。
実は、がんもどき理論は、がんと診断された患者さんがどう行動するか、その判断を助けるための考え方です。
この理論にとって、ある患者さんのがんが本物のがんか、がんもどきかはどちらでもいいのです。
なぜならば、もしある患者さんのがんが本物のであれば、転移があるので何をしても治らないから治療をすることは無駄。
これに対し、がんもどきであれば、放っておいても転移しないので治療の必要がない。
どちらにしても、治療の必要がないわけです。

そして治療を受けなければ、本物のケースも、もどきのケースも、手術や抗がん剤で命を縮めることはなく、治療を受けた場合より長生きすることができます。
勝敗に例えるなら、全員が勝利するのです。

このように、がんもどき理論を採用すれば、患者さん全員が治療を受けた場合よりも長生きできて勝利するのですから、敗者が生じるじゃんけんに例えるのは不適当なのです。