難病 1

日本人の死に時より 医師の書

これから老いていく人は、元気に生きることばかり考えて、その先のことを意識していないのではないでしょうか。
もし、長生きを望むのなら、その後、どう死ぬのかまでしっかりイメージしておいた方がいいと思います。
長生きすると、当然身体は老いて弱りますから、死ぬ前はある程度苦しい期間があります。
そのときになって、思い通り動けないとか、あちこち痛いとか、こんなはずではなかったと思わないためにです。

どんなに苦しくても、死んだほうがましという状況などあり得ないとお考えでしょうか。
私は仕事柄、そんな状況をよく目にします。

私が在宅で診ていた62歳の女性は、筋委縮性側索硬化症という難病で、すでに寝たきりの状態でした。
この病気は、全身の筋肉が徐々に委縮し、最後は衰弱して死に至る恐ろしい病気です。
治療法はなく、対処療法しかありません。