難病 2

日本人の死に時より 医師の書より

部屋に飾ってある美人でふっくらした写真に比べて、目の前の患者さんは、別人と思うほど痩せこけていました。
食事は呑み込めないので、胃ろうから栄養剤を注入していました。
手足は筋力低下のために動かせません。
呼吸筋も弱っていて、自分の呼吸だけでは足りないので、マスクによる補助呼吸器をつけていました。
そんな状態でしたから、病気としては末期の段階でした。

「ちょっと難しい病気だからねえ」と私が言うと、「それは分かってるねん。けど、身体は動かんでも心は自由やから」と、喘ぎながらきっぱりと言いました。
私が診察を始めたころは、10分くらいマスクをはずしていることができました。
その間にいろいろ話しをして、苦しくなるとまたマスクをつけるのです。
この状況を改善するには、気管切開をするのがもっとも有効です。

ただ問題は、しゃべれなくなることです。