自分のことだけしか関心がない

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

人生相談をしているある人の話しでは、相談者はみな「自分のこと」以外のことには、ほとんど関心がないという。
世界中で起こっている国際紛争で死にゆく人々のことや、地震や台風などの災害で苦しんでいる人のことにはまるで関心がなく、目の前の自分の問題、しかも自分自身のことばかりに目を奪われている。
「私はマイナス思考で幸せになれないんですよ」
「自分は暗い性格なので、友だちができないんです」
など、どんな話題を提供しても、結局は自分の問題に話しを持っていく。

しかし、ほとんどの相談者は、他人や社会に目を向けられないほどの危機的な状況にあるわけではない。
ちゃんと仕事をして、テレビを見て、新聞を読んでいられる状態であり、心の病ともいえないのに相談している。
そんな自分ことだけを考えてしまう心に、幼児性が多分に感じられるという。
そういう人は、周りの人をまるで自分のために存在するかのように錯覚している。
広く社会を見渡せば、自分よりも、もっと苦しい条件下でたくましくも健気に生きている人を発見できるし、自分の心のバネにすることもできるのに。