成人式

ココロの架け橋 中野敏治

成人式は、教え子たちとの再会のときです。
中学校を卒業して5年間ほどですが、すべての教え子たちは大きく成長しています。

彼らが中学生のとき、いくつかの問題が学校で起きていました。
私の注意に対し、竹刀で殴りかかろうとしてきた生徒がいました。
「ここで殴りかかられたら、今までの私の気持ちは彼には通じていなかったんだな」と思いながら、竹刀を振り上げた彼にぐっと近づきました。
彼は、私の思いもよらぬ接近にその竹刀をそっと足元に下ろしました。

親への反抗もありました。
家庭訪問をし、父親ともめている彼を家から連れ出し、私の車で彼の気持ちが落ち着くまで走り回ったこともありました。
また、夜遊びして、朝起きられず遅刻が多くなった彼の家に、朝、家庭訪問し、彼の部屋に入り、布団をはがし、起こしたこともありました。
彼は他校の生徒との関係ができ、行動範囲も広がり、私もクラスメートも心配することが多くありました。
でも、クラスメートは、彼が学校を休んだ時も連絡し、いつでも彼をクラスの中に受け入れようとしていました。

成人式の式典が終わり、懇親会が始まると、彼が「紹介したい人がいるから、ちょっと来て」と、私を呼ぶのです。
彼は私を引っ張りながら、成人式の会場の入り口の方へ案内してくれました。
そこには中学校時代に彼と行動していた他校の生徒たちが数人集まっていました。
彼らも中学時代、つっぱっていて、問題行動を起こしていた生徒でした。

彼は私をその生徒たちの前で、「これが俺の中学の時の担任だよ。中学校の頃、話していた担任だよ。この先生がいたから、俺、何とかなったんだよ」と紹介してくれたのです。
今、彼は20人もの従業員がいる会社の経営者です。