ガンが生まれて大きくなるまで10年はかかる

70歳からの選択 和田秀樹

ガン治療の専門家である近藤誠医師(2022年8月に逝去)は、ガンの転移は周りの細胞からおこるのではなく、ガン細胞そのものから転移すると主張されてきました。
というのも、ガン細胞が生まれて、それがある程度の大きさになって見つかるまでに、どんなに早くても10年はかかります。
転移するガンであるなら、その10年間で他に転移しているし、その間に転移しないならば、これからも転移は起こりません。
だから、ガンの周りの細胞を切除しても無駄だというのです。
ちなみに、近藤先生は、日本で乳房温存療法を提唱した第一人者でもあります。
それまで乳がんは乳房を全適していましたが、近藤先生のおかげで、乳房を残す手術が確立したのです。

私がガンを切除した高齢者を見る限りにおいて、ガン周辺まで大きく切除していいことはまったくありません。
体が衰えるスピードが速くなるし、やりたいことができなくなるほどヨボヨボになるからです。
たとえガンだけを切除できたとしても、私は70歳を超えたら、ガンは手術すべきではないと思っています。
がんの進行が遅いのに加えて、手術には全身麻酔のリスクなどもあるからです。