3㌔の臓器を切り取った果てに

近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? 近藤誠

9月に3回目の手術をすることが決まった逸見政孝さん。
13時間に及ぶ大手術で逸見さんは、腹膜にあった22か所のがん、胃の残り全部、すい臓の半分、脾臓など、総重量3キロにも及ぶ臓器を切り取られました。
手術前に「こんなに臓器を取って大丈夫ですか?」と聞いた逸見さん夫婦に、医者は「可能性はある、元気になった人はいる」と答えたそうですが、それはあり得ない。
こんなに臓器を取ったら、体が弱ってしまって、治る可能性は1%もないんです。

腸閉塞になるのを防ぐと言われて、これほどの大手術を受けたのに、逸見さんは10月に腸閉塞を起こしてしまいます。
がんが腸を塞いでしまったのです。
腸閉塞になると、患者さんはとても苦しみます。
仕方なく、腸が詰まって逆流した胆汁を鼻から管を通して吸い出しましたが、それで苦痛がなくなるわけではありません。
しかも、こんな状態の逸見さんに、医者は抗がん剤を投与したのです。
抗がん剤は、毒薬、または劇薬に分類される非常に毒性の強い薬です。
こんなに弱った人に投与したら死んでしまいます。

結局、逸見さんは手術後の痛みと腸閉塞、抗がん剤の副作用に苦しみぬき、一度も家に帰れないまま、12月25日に亡くなりました。
まだ48歳でした。

こうした経緯を書いていると、僕は腹が立ってどうしようもない。
転移があればがんは治らないと、分かり切っているじゃないか。
それなのに、3キロもの内臓を切り取って、仮にがんがすっかりなくなったとしても、普通の生活に戻れると思っているのか?
何のために人は手術を受けるのか、分かっているのか?
医者に想像力があれば、こんな手術はしないはずです。